日本産業技術教育学会 「中学校プログラミング教育の実態調査の報告 ―令和元年度 技術・家庭科技術分野『D情報の技術』の現状―」

日本産業技術教育学会
「中学校プログラミング教育の実態調査の報告 ―令和元年度 技術・家庭科技術分野『D情報の技術』の現状―」
を公表しています。

詳しくは、
https://www.jste.jp/main/teigen/210127_jr_chosa.html
をご覧ください。

調査目的
中学校でのプログラミング教育を担うのが,技術・家庭科技術分野「D情報の技術」である。平成29年告示の新学習指導要領では,プログラミングについての新しい内容も追加された。本調査では,令和3年度より正式に始まる新学習指導要領前に,その準備状況を確認することを目的とした。

技術・家庭科技術分野「D情報の技術」について

  • 技術・家庭科は,平成10年の学習指導要領より,第1学年 70 時間,第2学年 70 時間,第3学年 35 時間となっている。
  • 技術分野と家庭分野の内容があるので,技術分野としては,基本的には,第1,第2学年35時間(週1時間換算),第3学年 17.5 時間(2週に1時間換算)のみとなる。
  • 技術分野は,「A材料加工」,「Bエネルギー変換」,「C生物育成」,「D情報の技術」の4内容で構成。
    ・プログラミングに関する内容は,「 D情報の技術」で実施。
  • 小学校におけるプログラミング教育の成果を生かし,発展させるという視点から,従前からのプログラムによる計測・制御に加えて,ネッ トワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングについても扱う。また,情報セキュリティ等についても充実させた。

実施期間: 令和元年10 月21 日(月)から12 月20 日(金)

回答方法: 全日本中学 校技術・家庭科研究会のホームペー ジもしくは, Web でアンケートに回答。

回答: 全都道府県より,1,282校の回答を得た(調査対象中学校10,649 校,回答率12.04%)。

調査項目:
〔I〕 学校の基本情報
〔II〕プログラミング教育実施状況調査・調査項目
〔III〕コンピュータ等の施設・設備及び学習環境の現状

調査対象: D(1),D(2),D(3)の実施状況について

調査結果の概要 ※調査結果の詳細はこちら(PDF)

全体を通して

  • 各校限られた時間数や教育環境の中で,工夫しながら実践を進めている様子が確認できた。GIGAスクールにより,特にネット環境の改 善がなされるので,対応した実践の展開が期待される。

実施上の課題として多く挙げられた点

  • 指導・授業展開の難しさが最多。
  • 技術科教員が各校1名が大半であることも考えると,ネットを活用して参考になる指導事例や資料,研修教材を配布したり,オンラインで 研修を受けられたりできる対応も必要。
  • 2番目課題は授業時間数の少なさ。
  • 指導内容の多さに比べて,授業時間は少なく,技術科教員に大きな負担になっている。中学校でのプログラミング教育の充実のためにも, 授業時間数の増加が必要。

「D(1)生活や社会を支える情報の技術」の実施状況

  • 2年生以上での実施が半数。
  • 身の回りの情報技術および情報セキュリティ・モラルについて扱っていた。
  • 教材は,教科書と共に,Web 資料や動画クリップ等,ネット上の教材がかなり活用されている。
  • プログラミング等と組み合わせるなど,多様な展開がされている。
  • 課題としては,指導・授業展開の難しさが最も多かった。また,技術進化に対する研修の難しさや時間数不足が上げられた。

「D(2)ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」の実施状況

  • 6時間までの展開が最も多い。
  • 半数以上が3年生以上の実施。
  • 題材は,校内掲示板・校内Webページが最も多く,半数以上は校内LANの利用。
  • プログラムの内容も多岐に渡っていた。
  • 教材としては,Scratchは4割近い学校で活用。
  • 課題としては,教材・資料の不足と共に,PC・ネット環境・制限および授業時間の不足が上げられていた。

「D(3)計測・制御のプログラミングによる問題の解決」の実施状況

  • 5時間までの展開が6割。次に10時間までで展開。
  • 3年生で実施している学校が7割。
  • 題材は,4割近くがロボットカーであったが,それ以外の制御教材も一定数。
  • 信号機や電車モデル,家電模型など,生活や社会と関連付けた題材展開も工夫されていた。
  • ロボットカー制御教材およびLEDライト制御教材が半数の学校で扱われていた。
  • 課題としては,指導・授業展開の難しさが最も多く,続いて指導時数の不足,予算・教材・資料の不足があげられた。

セキュリティ等,環境について

  • 6割近い学校では,セキュリティ環境の整備が進んでいる。
  • 4割弱の学校では,厳しすぎるセキュリティレベルにより,授業への支障が生じていた。
  • ソフトウェア等のインストールには,8割の学校で,教育委員会等の権限が必要であった。

調査結果を踏まえた本学会の対応

  • 本調査結果を踏まえ,中学校の実践事例集を編集。
  • 文部科学省の実践事例集として,以下で既に公開されている。
  • 中学校技術・家庭科(技術分野)内容「D 情報の技術」におけるプログラミング教育実践事例集
  • 実践上の課題に対しては,大学入試共通テスト「情報科」への本学会の提言として,高等学校での授業を支える中学校での学習の充実として,授業時数増や免許外担当教員解消等を文部科学省に提出。
  • 中学校教員用研修教材および実践支援資料等も順次公開予定。
  • 学会として教育研究を積極的に推進すると共に,全日本中学 校技術・家庭科研究会とも連携しながら,学校現場に寄与する研究を展開。
  • 令和3年度以降の新学習指導要領の正式実施後の状況調査も検討。