第1回 初等中等教員研究発表セッション

2020年3月7日、金沢工業大学扇ヶ丘キャンパスで開催される情報処理学会第82回全国大会において、
第1回 初等中等教員研究発表セッションが開催される予定でした。

(参考)

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中野 由章(神戸市立科学技術高等学校)
情報科とカリキュラム・マネジメント

【講演概要】共通教科情報科が,従来の選択必履修から「情報Ⅰ」共通必履修となり,さらに発展的科目となる「情報Ⅱ」も設定された.そして,大学入学共通テストで「情報Ⅰ」を出題する方向で検討が進んでいる.そうなると,従来以上に重要となってくるのが,カリキュラム・マネジメントである.大学入試や「情報Ⅱ」の存在は,「情報Ⅰ」の自由度をある程度束縛することになるものの,指導内容をあるべき姿や標準化促進に導くメリットが大きいと考える.また,大学などで多くの有用な教材が開発されたり,放送大学などで充実した授業コンテンツが用意されたりしている.学校現場でそれらを資源を活用するための環境を整えることもまた非常に重要である.
田鶴 悟(京都府立須知高等学校)
高等学校におけるPBL学習でのコンピテンシーの評価について

【講演概要】京都府立須知高等学校では,平成24年度から普通科第3学年の生徒を対象に「問題解決学習(PBL)」に取り組んでいる.地元企業と協働し問題解決案をビジネスプランにまとめ発表している.授業評価は,経産省発表の社会人基礎力を,身に付けたいコンピテンシーと位置づけし,それらの項目をポートフォリオに示し評価している.学習指導要領では,「職業人として豊かな人間性を育み,情報産業の創造と発展に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う」とある.問題解決能力の育成は情報科のテーマの一つであり,実践を通して統計学など関連する技術も多くある.この発表を通じて,今後の情報教育の在り方について意見交換ができればと考えている.
米田 貴(神戸大学附属中等教育学校)
神戸大学附属中等教育学校の情報教育

【講演概要】中等教育学校は1年生(中学1年生に相当)から6年生(高校3年生に相当)まで在籍している校種である.原則として中途での入学者がいないため全生徒が6年間在籍していることを前提としたカリキュラム設計が可能である.2022年から新しい学習指導要領に基づき「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」がはじまるが,履修すべき内容に対して時間数が少なく難しいという声も情報科の教員から聞くことがある.本セッションにおいてはこの時間的制約にも留意しながら,中学校と高等学校における技術・情報分野のカリキュラムを1人の教員で実践した実践内容や見解について述べ,これからの中等教育段階における情報教育の質的向上について検討したい.
小原 格 (東京都立町田高等学校)
東京都立町田高等学校におけるプログラミング教育と生徒の反応

【講演概要】本校では,1学年に「情報の科学」2単位を必履修で設置するとともに,2017年度より,新科目「情報I」に向けた取り組みを行っている.特に「情報I」においては,コンピュータそのものの計算の仕組みや,問題解決を意識したプログラミングなどが求められているため,JavaScript等を利用した問題解決的なプログラミング学習を行うとともに,生徒自身が作品を評価・改善するための授業デザインを行ってきた.ここでは,2019年度におけるコンピュータの仕組みやプログラミング等に関する実践を紹介するとともに,より発展的な内容まで学習したい生徒向けに希望者を募り実施している「プログラミング教室」等について,生徒の感想や意見も交えながら触れていく.
福田 匡孝(富山県立魚津高等学校)
プログラミング学習での高校生の躓きの分析と支援について

【講演概要】次期学習指導要領改定時に,現在の高等学校情報教科が「情報I・Ⅱ」へ編成される.情報Iでは,新たにプログラミング教育が導入され,全員が履修することになる.大学等でプログラミング教育が以前から行われており,学習者の躓きに関する知見が集積されているが,高校生に対しては知見が十分ではなく,時間の制約や環境の違いなどによって躓きなどが違うのか分析されていない.また,プログラミングの指導に対して不安だと感じる教員が存在しており,躓きに関する知見の集積や支援が必要である.そこで,プログラミング学習後に課題を出題し,その回答を分析すると共に,アンケートの回答を分析をすることにより,高校生がどのような事で躓くのか考察する.
延原 宏(神戸星城高等学校)
ICTを活用した探究学習における教育効果に関する研究:高等学校における商店街活性化実践を通して

【講演概要】本校では,これまでの授業実践においてICTを活用して商店街の活性化を目指した探究学習に取り組んできた.この学習活動で商店主は活動に対する強い期待があり,学習者がその期待を感じることで主体的な活動となる変化が見られた.しかし,どのように行動していいのか分からない学習者が存在した.そこで,本研究では「ルーブリック評価表」を学習者に提示し,行動指標を持たせてから,校外活動を行った.調査については,校外活動の前後段階で授業の感想を自由記述形式で求め,テキストマイニングによる定性データの分析と文部科学省の情報活用能力調査の質問項目を採用した定量データの分析を試みた.その結果,行動指標の明確化が,学習者の自己肯定感や自信,動機付けに繋がることが明らかになった.
梶尾 滝宏 (熊本県立宇土高等学校)
探究の「問い」を創る授業 ~課題研究を通して得られた視点を授業へ生かす「問い」とは~

【講演概要】海外のAI人材育成戦略が激化する中,日本の中高生が今を生き抜くには,論理的思考力や協調性を獲得しつつ,未知なる課題に挑む姿勢を育むことが大変重要だと感じる.本校は併設型中高一貫校として,無人島サバイバル体験や海外研修,学会発表等を実施し,探究心や倫理観,科学的リテラシーを身に付けさせるカリキュラムを組み,高度な研究機関や台湾の大学との連携にも力を入れている.今回,情報教育の未来を見据え,熊本県内の取組や支援,また,地震を経験した中学生のSTEAM教育授業から高校へと広がった課題研究の視点を生かした『探究の「問い」を創る授業』の実践例,分析ソフト等を用いた検証やアプリ開発等の生徒の実践例と成果を報告する.
福田 哲也(追手門学院大手前高等学校)
「ロボットづくりは,人づくり」 ~生徒の成長を育むロボット・プログラミング教育の実践~

【講演概要】2003年にNASAの教育基金をもとに「火星探査」をテーマにした教育プロジェクト(探査ロボットのモデル製作)を実施.それをきっかけに15年以上,ロボット・プログラミング教育を,授業で,課外活動で,地域で展開してきた.ロボコン世界大会で優勝するなど数々の成果を残してきたが,その過程で,多くの生徒たちの成長にふれてきた.技術力やプログラミングスキルだけでなく創造力,問題解決能力,そしてコミュニケーション力の育成にも寄与することから,その教育的効果に魅了されるとともに,その教育的価値を確信している.未来の社会を担う人材育成の観点から,これまで取り組んできたロボット・プログラミング教育実践を紹介する.